なぜ、社会福祉法人の税務は難しいのか?

あまり知られていないことですが

社会福祉法人に対応できる税理士は殆どいません。

おそらく3%程度ではないでしょうか?

今日は、なぜ社会福祉法人の税務が難しいのか、

について解説します。

それは、慣れていないことに加え、

業法や社会福祉法人会計基準など

知らなくてはいけないことが多いためです。

それに加えて税法が難しい。

特に社会福祉法人の法人税や消費税といった

税務において一番見落としがちなのは、

「事業」という概念があることです。

確かに、法人税法上「事業譲渡」などと

いう言葉はありますが、税法上の定義はなく

一般事業会社の仕事をしていて、法人税で

「事業」を考える必要はありません。

法人税法施行令第5条には、収益事業の範囲として、次のように書かれています。

法第2条第13号(定義)に規定する政令で定める事業は、次に掲げる事業(その性質上その事業に付随して行われる行為を含む。)とする。

つまり、昨日ブログ「社会福祉協議会の収益事業判定は要注意!!」で書いた、ホームレス復帰支援事業が不動産賃貸業と認定された東京地裁平成28年3月29日判決は、賃貸借契約があり、これに対する対価の収受を根拠に不動産貸付業に当たると結論付けています。ホームレス等支援事業と密接に関連しているからといって、収益事業である不動産貸付業に当たらないということはできないと判示しています。つまり、複合的な業務から建物貸付業のみを抜き出して、収益事業と認定されることは、あり得ます。

普段の常識から考えると違う判断がされるからこそ

税法解釈に基づき、

どの「事業」に果てはまることがあり得るか

考えることが必要です。

また、消費税法第6条(非課税)の別表第1には、

社会福祉法第2条(定義)に規定する社会福祉事業及び更生保護事業法(平成7年法律第86号)第2条第1項(定義)に規定する更生保護事業として行われる資産の譲渡等(社会福祉法第2条第2項第4号若しくは第7号に規定する障害者支援施設若しくは授産施設を経営する事業、同条第3項第1号の2に規定する認定生活困窮者就労訓練事業、同項第4号の2に規定する地域活動支援センターを経営する事業又は同号に規定する障害福祉サービス事業(障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律第5条第6項、第13項又は第14項(定義)に規定する生活介護、就労移行支援又は就労継続支援を行う事業に限る。)において生産活動としての作業に基づき行われるもの及び政令で定めるものを除く。)

と、記載されています。

「社会福祉事業として行われる資産の譲渡等」というのがポイントです。

通常、消費税は、一つの取引ごとに

課税非課税の判定をするのですが

社会福祉法人事業については、

一つの取引ごとだけではなく、

社会福祉事業を意識しなくてはならない

とことになります。

例えば、駐車場料金を徴収しても

それが社会福祉事業の利用者の専用駐車場で

社会福祉事業の一環と認定されれば

非課税取引となります。

つまり、消費税の判定をするためには、

社会福祉法等の業法を理解して

どの取引の範囲まで、社会福祉事業と言えるのか、

法律で規定されているのか、

社会通念上そう言えるのか 、

線引きを考えないといけない

ということです。

つまり、税理士が

社会福祉法人の税務ができるためには、

社会福祉関係の知識も

勉強せざるをえないということです。

なので、「相談」といっても

それは、障害児相談事業なのか、

自治体の独自事業なのか、

それ以外のものなのかで

税法の取り扱いが異なります。

さらに、特定の取引が社会通念上

その「相談」の範囲に含まれるのか

そうでないのか判断しなくてはなりません。

これは現場で働いたことがない人にとっては

かなり大変です。

ちなみに私は、かつて、

病院や福祉施設のコンサル会社にいたので

医療法、介護保険法などの

施設基準などを熟知しており、

かつ、現場の運用もイメージが付くので

これらと似ている社会福祉関係も

対応できています。

社会福祉法人の税務は

一般事業会社のような

流れ作業のようにやれないので

大変なんですよね・・・

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