経理 サポート会計事務所

同族会社の行為計算否認に関する解釈

経理サポート会計事務所(新宿区高田馬場)
代表税理士  松野 亮
1974年東京生まれ。
中小法人の人材不足、資金調達、相続・事業承継の悩みを解決する専門家。

 

医療コンサルティング会社にて、医業(福祉)経営コンサルティングや医療機関・福祉施設などの 業務に従事。多くの案件を成功に導くも、クライアントの経営危機で、力及ばず救うことのできない案件を経験する。これにより、会計税務、法律の知識が必要だと痛感し、税理士を志す。  

 

その後、業界最大手の税理士法人にて、10年以上に渡り、部門責任者として、500社を超えるクライアントの会計・税務業務に従事し、多くの実績を残す。
 
現在は、経理サポート会計事務所の代表税理士として、「クライアントとは一生涯付き合い、支えていく」ことを信念に、中小法人の人材不足、資金調達、相続・事業承継の悩みを解決するために奔走中。
 
講演実績
税務、租税法、医療政策、医療経営、医療会計、社会福祉法人会計などをテーマに活動。
いままでの受講者数は累計1万人以上
 
趣味
ワイン、ウイスキー、スキー、スポーツバイク
読書(司馬遼太郎)

 

現在、私が注目している判決のひとつに

同族会社からの借り入れに対する支払利息の額の損金算入について争われた東京地判令和1年627日(LEXDB/ 25570412)があります。

こちらは、同族会社の行為計算否認(法人税法1321項)についての事案です。

 

まず、同族会社の行為計算否認に関して説明します。

税法は、国民の財産への侵害規範なので、法律に基づいて課税するのが大原則になります。

ただし、それだけですと、法律が想定していない利用をされる(いわば裏技的な使い方)で課税を逃れようとすることができてしまうので、否認規程として、同族会社の行為計算否認(132条1項)、組織再編成に係る行為計算否認(132条の2)、連結法人に係る行為計算否認(132条の3)が規定されています。

 

今回の同族会社の行為計算否認規程(1321項)は、

「税務署長は、次に掲げる法人に係る法人税につき更正又は決定をする場合において、その法人の行為又は計算で、これを容認した場合には法人税の負担を不当に減少させる結果となると認められるものがあるときは、その行為又は計算にかかわらず、税務署長の認めるところにより、その法人に係る法人税の課税標準若しくは欠損金額又は法人税の額を計算することができる。」としています。

 

この規定にいう、税負担の不当に減少させる同族会社の行為計算とはなにかについて、「純経済人の行為として不合理・不自然な行為・計算がこれにあたる」としているのが、通説でした。

 

東京地判令和1年627日(LEXDB/ 25570412)では、次のように判示されています。

 

「法人税法132条1項1号の趣旨に照らせば,当該同族会社の行為又は計算が,同項柱書にいう「これを容認した場合には法人税の負担を不当に減少させる結果となると認められるもの」に該当するか否かは,専ら経済的,実質的見地において,当該行為又は計算が純粋経済人として不自然,不合理なものと認められるか否か,すなわち経済的合理性を欠くか否かという客観的,合理的基準に従って判断すべきものと解される。

利益を産み出し,これを出資者である株主や社員に対して還元することを究極の目的とする会社にあっては,事業の目的に沿った種々の経済活動を遂行するに当たり,業務の管理・遂行上,財務上又は税務上などの様々な観点から,利益を最大化し得る方法を法令の許容する範囲内で自由に選択することができるところ,仮に,税務署長が法人税法132条1項の適用に当たり,会社の経営判断の当否や,当該行為又は計算に係る経済的合理性の高低をもって「不当」か否かを判断することができるとすれば,課税要件の明確性や予測可能性を害し,会社による適法な経済活動を萎縮させるおそれが生じるといわざるを得ない。したがって,当該行為又は計算が当該会社にとって相応の経済的合理性を有する方法であると認められる限りは,他にこれと同等か,より経済的合理性が高いといえる方法が想定される場合であっても,同項の適用上「不当」と評価されるべきものではない。

 そして,同族会社にあっては,自らが同族会社であることの特性を活かして経済活動を行うことは,ごく自然な事柄であって,それ自体が不合理であるとはいえないから,同族会社が,自らが同族会社でなければなし得ないような行為や計算を行ったとしても,そのことをもって直ちに,同族会社と非同族会社との間の税負担の公平が害されることとはならない。

 以上を踏まえると,同族会社の行為又は計算が経済的合理性を欠くか否かを判断するに当たっては,当該行為又は計算に係る諸事情や当該同族会社に係る諸事情等を総合的に考慮した上で,法人税の負担が減少するという利益を除けば当該行為又は計算によって得られる経済的利益がおよそないといえるか,あるいは,当該行為又は計算を行う必要性を全く欠いているといえるかなどの観点から検討すべきものである。(一部筆者修正)」

 

仮にこの東京地裁の判断基準によると、行為計算による経済的利益が存在しなかったり、または、行為計算を行う必要性を欠いているというようになるので、かなり行為計算否認の認定のハードルは高くなります。

 

実際には、行為計算否認を理由としての更正処分

はとても難しいのですが・・・

税務調査において、調査官が

行為計算否認をちらつかせることで

税理士がビビッて修正申告をしてしまう

という場面がときどきあるのが現状です。

 

もし、この解釈が通説となれば、

税務調査でビクビクことは少なくなるでしょう。

 

ただ、こちらは、国は高裁に控訴中なので、

まだ確定していないことに加え

地裁・高裁の判示事項については、

多少影響はするものの

確定するものではありません。

このような解釈が通説になっていくには、

同趣旨の判決がいくつも必要です。

 

すぐに実務に連動するのは、

国税不服審判所裁決と最高裁判決です。

国税不服審判所裁決が、実務にリンクする理由は、

国税不服審判所は、課税庁の上級機関なので、

その判断には、国税は必ず従うからです。

 

また、最高裁は、法律解釈の統一を図る役割を持つので

最高裁が示したことに、従わざるをえないからです。

今後の高裁で、どのような判断が示されるか注目です。

  

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